第13回読書会 つぶあん編

エンジェルフライト 国際霊柩送還士・佐々 涼子

外国で亡くなった人を母国の遺族のもとまで送り届けるまでの一切を請け負う、日本で唯一の会社「エアハース インターナショナル」。
外国に住んでいながらほとんど考えたことがなかった。
もし外国で亡くなったらどうなるのか。
あぁ...今私や息子たちがここで死んだら彼らのお世話になるのか。
お世話になりたい....心の底から思える。

実は割と読むのが早い私が、急いで毎日読んでいたのにも関わらず、1週間もかかってしまった。
なぜなら、私自身の過去を思い出しながら読み進めて行ったからだ。
必ずしもいい思い出ばかりじゃなかったし、さらに反省したり、泣いたり....だ。
そしてかつて死に関する本を読みあさった頃に読んだ本もいくつか出てきて、またそこでその当時の記憶が蘇り.....。

まず子供の頃に母方の祖父が亡くなったときに、初めて嗅いだ死臭。
あのときはとても驚いて、ただただ恐怖の記憶しかな残っていない。
そして母を含め、たくさんのひとが泣いていた光景。
でも振り返ってみれば、死臭というものを嗅いだのは、あのとき以来ないと思う。
おそらくその当時はまだ遺体の保存方法が今より悪い時代だったんだと思った。

そして20代前半、私が看護師だったころの記憶。
当時勤務していたのは大きな国立病院で、そのなかでも私が勤めていた病棟は外科病棟。手術前後の患者さんも多いが、それと同じくらいにガンで亡くなる患者さんが多かった。たしか年間一番亡くなる数が多かった病棟だった。
何人もの患者さんのエンゼルケアと呼ぶ死後の処置をさせて頂いた。
時には深夜に、たったひとりで個室で亡くなったばかりの患者さんのエンゼルケアをしたこともあった。
身体を拭いて、耳や鼻や肛門などに鑷子を使って綿を詰めていく。当たり前だが驚くくらいの綿が入っていく。
最後には押し込んで蓋をするようきっちりと詰める。
男性なら伸びた髭をそってあげて、女性でも産毛をカットしてお化粧をする。乾いて固くなった皮膚に上手くファンデーションが塗れなかった。
その時の皮膚の感触や、背中を拭くために身体を動かしたときのご遺体の重さまで.....いろんな記憶が蘇ってきてしまった。
今回のエアハースインターナショナルの方達のように、美しく仕上げてあげられなかったなぁ....と、そんな懺悔や後悔の気持ちがじわじわーっと広がった。
でもあの時は全く、怖いとかという感覚はなくて、もともとお世話させて頂いた患者さんだったから、ある意味遺族に近い感情で接しながら最後のケアをさせて頂いたような記憶がある。

そして数年後、父方の祖父祖母が亡くなり、若い友人が病気で亡くなった。
遺体の状態で会ったのだが、その時に触った顔の感触までが、この本を読みながら蘇った。

私がエンゼルケアをさせて頂いた患者さんの身体は傷はあったけれど痛んではいなかったし、知らない方でもなかった。
でもエアハースインターナショナルの彼らは、時には想像を絶する状態のご遺体に直面する。
悲しみの底で、一刻も早く会いたいと願っている遺族にベストの状態で対面させるために、パスポートの写真をみて、プロフェッショナルな高い技術で出来る限り生前の状態へ近づける。
「お帰りなさい、良く帰ってきたね」
ご遺体を労りながら、労いながら、声をかけながら。

彼らの仕事はとても尊い仕事だと心から思う。
本当に素晴らしいです。


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